口の開け方、その時舌は?

 

 歯の検診や治療を受けるとき口をあけます。その時舌をどのようにすればよいか、また限界まで大きく口をあけるべきか、全く考えない方も居られますが、逆に意識してしまう方も意外と多いのではないでしょうか?

 先日、某高校の歯科検診に行きました。600人ほどの生徒の口の中を診査したのですが、口の中の状態はもとより、口の開け方やその時の舌の置き方(力をいれて、歯全体を覆ってしまう人、内科で喉を見てもらう時の様に舌を思いっきり出してしまう人等など)、また噛んでもらった時の噛み方(唯単に上下の歯を合わせてもらうと、前歯でだけで噛む人、横の方で噛む人等)、十人十色です。しかし、なんと言っても一番困るのは、唇に力を入れてしまう方です。全く歯は見えなくなります。

 歯の治療でも同じです。みなさん舌をどのようにしてよいか考えてしまいませんか?一番困るのは、何も考えずに舌をだらりとしてしまっている人ですが、逆にあまり意識しすぎると舌に力がはいるため治療はしづらくなります。できれば舌は力をぬいて喉のほうにもっていくか、治療中の歯から遠ざけてほしいです。唇や頬も同じです。歯石をとっている時によく見受けられることですが、痛さのためか、無意識または人によっては意識的にその場所を触らせないようにさせるため、触っている歯の付近の唇に非常に力を入れてしまう方がいます。力をいれてもそこの歯石を除去することには変わりありません。それどころか歯を完全に露出することができなくなるために、唇を傷つける可能性があり大変危険です。やはり力をぬいてリラックスしてほしいです。

 歯を削る機械はエアータービンといいますが、その先端のドリルの部分は1分間に2050万回転で回っております。刃先に一瞬でも触れると唇や舌は勢いよく切れてしまいます。そのため私たちは半ば強引に器具を使い唇や舌を排除します。また唇を口腔内審査用の鏡で広げると、力の入れられた方向にされるままに顔を動かす方がいられます。これは非常に治療がやりにくいです。顔の方向はこちらが指示しないかぎり、なるべく一定にしておいてほしいです。

 歯の治療は痛みや恐怖心が先行してしまいがちで、実際口の中で行われていることは解っていても考えている方は少ないと思います。ただ単に治療ですが、口の中で行われていることはとてつもなく危険なことです。削っている歯に舌を近づける事や唇に力を入れてしまう事は、電気ドリルで角材やコンクリートに穴を開けているところに指を近づけることと同じです。そのようなことをすると回転している刃にすぐに巻き込まれてしまい思わぬ事故を引き起こします。

 治療をうける体勢は難しいとおもいますが、先生からの指示がないかぎり、むやみに顔を動かさず、唇は力を入れず、舌は治療している歯から遠ざけた位置におきリラックスしていただくと、治療する側もされる側もやりやすくなります。かといってあまり意識しないことも忘れないでくださいね。



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