歯医者に行く ≒ 習い事・・・??

 

 歯にトラブルがおこり歯科医院に行く。何も疑うことのない行動ですが、日々来院される様々な人の歯の悩みに対応していると、いつも思います。他人の話を聞かない人や他力本願の人は、治らない、または治してもすぐに悪化する。

 皆さんは、歯科医院に通い治療が進むと必ず“しっかり歯を磨きましょう”といわれたことと思います。言い方にかなり気を使っておりますが、わたしもこの様な言葉を口にしてしまう歯科医のひとりです。いつも口の中に汚れを付けてくる人に歯磨きのことを言うと、必ず“磨いているんですけどねぇ〜”と全く受け付けない様子。すかさず“1日どのくらい磨いていますか?“と質問すると“朝だけ・・!?または夜1回・・・!?”これでは虫歯にもなりますし歯周炎も改善しません。ちなみにこのような話をするのは、この人にたいして初めてではなく何度となく時間を割いて歯ブラシ指導も行っております。

 私の身近にピアノを教えている人がいます。その人はある生徒の父兄から“週に一度のレッスンでは上達しませんよね”と言われたそうです。話を聞くと、なんとその生徒は家では全く練習をしていなかったのです。それどころかレッスンに行くだけでピアノが上達するとその父兄も思っていたのです。何か間違っていると思いませんか? 何かを自分に身に付けるためには、学んでいることの予習・復習が大事で、それがあるからこそ自分の間違えや不得手なところがわかり、助言してもらうことによって得ることがあるのではないでしょうか。ただ行くだけでは意味がないですよね。

 医者は病を治すのではなく、病が治る方向に導いているだけなのです。要は身体に治る力がなければ、何をやっても無理なのです。その治る力を身に付けるには、その人自身の、食生活や生活習慣の改善が必要なのです。医術を施すことや、薬を飲むということは病を治りやすくしているにすぎず、完全に治すのは身体の回復力なのです。

 口腔内の異常は、最近でこそ全身疾患の原因の可能性もあることが指摘されてくるようになりましたが、まだ世間一般では命には関係ないと見られております。そのため虫歯や歯周炎は軽視され、悪くなってしまった歯や歯周炎の治療を真剣に取り組む姿勢に欠けてしまう考えが生まれてしまうのです。

 自分の命に関わることなら、食生活に気をつけたり、入院や手術も受けますよね。

歯や歯茎が悪くても直接命には関係しない様に思えてしまします。それ故に、歯科医師や歯科衛生士のアドバイスに耳を傾けず、受け流してしまい、ただ通えば何とかしてもらえると思ってしまう人が出てくるのです。自分の努力があるからこそ健康が手に入るのであり、特に歯科治療の成功は患者さん自身の“歯ブラシ”という協力が必要不可欠です。それはまるで、進学や昇進に関係ないと思われてしまいがちな“習い事”に通じるものがあります。


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