歯の痛み、多くの人は・・・

 あわてて来院される患者さんを診ていつも思うことがあります。それは多くが“歯の痛み”を訴えるだけで、“どうして痛くなったのか”ということを考えていないということです。あまりの痛さでその様なことを考えられないのも理解できますが。歯に穴が開いていることや詰め物が取れていることに気がついていない、または気がついているけれど放置していたという方もかなりいます。とんでもないケースになると、数ヶ月前に治した歯が取れた、または痛くなったと訴えるのですが、ためしにどの歯か尋ねると左右逆だったりすることもあります。

 前回、歯の痛みは予兆があることをお話しましたが、歯肉炎(歯槽膿漏)の場合それがよくわかります。例外もありますが歯肉炎の急性症状は、始め歯が浮いた感じや物を噛んだり歯ブラシなどで触れたりした時痛いなどの症状があり、その後徐々にひどくなり何もしなくても痛くなるという過程をたどります。しかし多くの方は歯茎が痛いことや血が出ること等を理由にその歯の歯ブラシをしなくなります。それが誤りなのです。歯肉炎はご存知のとおり歯茎から血が出たり腫れたりする病気です。その原因は歯の周りの汚れから来るのです。もしその様な歯の汚れを取らなくなると、腫れている歯茎がさらに悪化し、より多くの歯垢(食べかす)がそこに入るという悪循環を繰り返します。基本的に最初の症状が出始めたときに、痛くても血が出ても歯ブラシをまめに行えば数日で改善してきます。それでも症状に変化がみられなければ、その時歯科医院に行くべきです。それでも我慢をし続け、どうにもならなくなったころに治療を願い出る為、最悪の場合麻酔が殆ど効かないなかでの治療となるのです。

 治療中の歯は、歯ブラシを全くしなくなる方もいます。私の歯科医院では最近殆どいなくなりましたが、よく治療しているところが痛くなったと飛んでこられる方がいます。もちろん急患で来られるのですが、治療中の歯に刺激を加えるなどのことをしても全く痛がりません。つまり歯自身は問題ないのです。しかし、その歯の周りは食べかすで非常に汚れています。新たに歯肉炎が起こってしまったのです。本人にそのことを伝えると、仮につめたものが取れることやあまり触りたくないなどの理由で歯ブラシをしなかったそうです。治療中の歯は、その歯の中に入れた薬の影響や仮に詰めたものが汚れやすい等の理由で歯肉炎になりやすいのです。そのため私は治療中の歯こそ念入りに歯ブラシをすることを強くすすめております。

 人は服装や髪型、化粧などを非常に気にして鏡をよくみます。しかしその時に口の中を確認する人はあまりいません。口に中を清潔に保ち、虫歯や歯肉炎を治療することは口臭予防になります。口臭予防は服装などと同様、エチケットの一つです。1日数秒で良いですから口の中を確認して異常があればすぐに治す事、つまり自分の口の中にもう少し関心を持ち手入れするだけで、急患でくる方の半分は歯が突然痛くなり酷い思いをしなくて済むのではないかと最近よく考えてしまいます。



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